猫の下痢や嘔吐は「膵炎」が原因かも?症状・治療法・急性と慢性の違いなど

2022/03/17

目次

猫の膵炎の症状は?

猫の膵炎ははっきりとした症状が出ないため、飼い主が気づきにくい病気です。

しかし放っておくと危険な状態にもなりかねないので、早期発見と治療が必要です。

ここでは急性膵炎と慢性膵炎の症状や合併症について解説します。

急性膵炎の症状

膵臓は消化酵素を作って十二指腸での食べ物の分解を助けます。

この消化酵素が十二指腸に届く前に活性化して、膵臓を溶かしてしまい炎症を起こすのが膵炎で、突然炎症を起こすのが急性膵炎です。

一般的な場合、1日に何度も下痢や嘔吐を繰り返し、食欲が突然無くなります。

さらに、上腹部の痛みが続き、腹部をかばう体勢をとったり、全体の動きが鈍くなる症状が急に現れます。

ただ、食欲不振や元気がないだけでわかりにくい場合もあり、様子を見ているうちに急に悪化することもあります。

慢性膵炎の症状

慢性膵炎は長期間膵臓の炎症が続いて、機能が衰えていきます。

症状があったとしてもわずかなもので、下痢や嘔吐がある場合でも数日に1度など、頻度が比較的低く、軽度なことが多いです。

そのため診断する場合も非常に難しい面があり、初期では発見しにくいことが多いです。

猫では比較的多く、中高齢の猫に起こりやすい病気と言われています。

進行すると食欲がなくなって体重が減少し、毛艶が悪くなります。

早く治療を始めると改善しやすいので、少しでも変だなと感じたら病院で受診することが必要です。

合併症の症状

猫が膵炎を発症した場合、「三臓器炎」という症状が出現することもあり得ます。

三臓器炎とは膵炎、腸炎、肝臓と胆のう・胆管の炎症という3つがあわせて起こることです。

膵炎のおよそ半数が三臓器炎を併発していたという情報もあるほどです。

膵臓は肝臓や胆のう、十二指腸、胃腸の臓器と隣り合わせなので、これらの臓器も炎症を起こしやすくなります。

また、慢性膵炎では血糖値の調節ホルモンが分泌されにくくなるため糖尿病を併発するリスクもあります。

猫の膵炎の治療法

膵炎の原因ははっきりとわかっておらず、治せる特効薬も今はまだありません。

炎症を起こした膵臓の血液循環の改善や消化器症状の治療などになります。

次に現在行われる膵炎の治療法について解説します。

栄養剤を投与する

この疾患になると、食べることを拒否する(食欲不振な)猫が多いです。

猫が食べなくなると、「肝リピドーシス」という肝臓機能が衰える状態になることがあります。

そのため、直接口から食事を取らない場合は鼻の穴から細いカテーテルを挿入し、食道まで通して栄養剤を補給させる必要があります。

膵炎の治療には栄養補給が大事です。

また膵外分泌不全を起こして、消化が十分に行われていない場合は消化酵素を補給することも行います。

投薬を行う

急性膵炎になってしまった場合は、早期の発見・治療が非常に大切であり、入院して輸液(電解質や水分などの投与)をすることが必須となります。

輸液とは血管の静脈に点滴をすることです。

それにより、血液循環を良くすることができ、下痢や嘔吐などからくる脱水症状の改善にもなります。

吐き気や痛みを抑える薬も使用されます。

消化管の動きが悪く食欲不振になることも多いため、早めに吐き気止めや消化器の改善を図る薬によって、症状を和らげます。

猫の膵炎の急性と慢性の違い

猫の膵炎には急性と慢性があります。

猫では慢性膵炎が多いと言われていますが、その違いはどんなところにあるのでしょうか。

次に解説していきますが、急性から慢性になったり、その逆の場合もあり、どちらも注意が必要な病気です。

急性膵炎の特徴

慢性膵炎とは異なり、急性膵炎はその名の通り、急激に引き起こされる強い膵臓の炎症です。

膵臓と隣接する消化管などにも炎症が広がり、腹膜炎なども引き起こされます。

急性膵炎は下痢、嘔吐、腹痛、眠り続けるなどの症状が出るので、発見しやすいのが特徴です。

軽度であれば早期の適切な治療で膵臓の機能は回復されますが、対応の遅れは全身の炎症に及ぶことがあります。

最も危険なことは多臓器不全を起こすことで、命の危険があるので、とにかくすぐに診察を受けることが大切です。

慢性膵炎の特徴

急激に炎症が起きる急性膵炎とは異なり、慢性膵炎は膵臓の炎症が長期的に続きます。

膵臓の機能が段々と破壊され、衰退していきます。

初期でははっきりした症状が出ないため、発見しにくいところも特徴的です。

一般的に7歳以降の中高齢の猫に多く、他の病気との併発も多いとされています。

病気が進行して痩せてから病院で診断されるケースもあり、飼い主が早期に発見することは難しい病気です。

できるだけ、定期的に健康診断を受け、病気の発見に努めましょう。

猫の膵炎の原因はある?

対応が遅れると、命の危険もある膵炎ですが、どのような原因で起こるのでしょうか。

実は、猫の膵炎の原因は未だ特定されていません。

しかし、原因と疑われているものは複数あり、膵臓の損傷やウイルス感染など多岐に渡っています。

例えば、トキソプラズマなどの寄生虫感染、胆管肝炎、薬物などの中毒、ヘルペスウィルスの感染などが考えられています。

どれが原因なのかは判明していませんが、いろいろな原因を考えて飼い主ができる予防について次にご紹介します。

膵炎の予防法

膵炎の予防法にはワクチン接種があり、ウイルス感染が原因の場合は、膵炎が引き起こされにくい状態になります。

また、慢性膵炎は定期健診などで予防できる可能性もあります。

特に中高齢になれば定期的に健康診断を受けることは重要で、膵臓に限らず肝臓や心臓などの状態も把握でき、様々な病気の早期発見に役立ちます。

それにより慢性膵炎の発症を予防できることにもつながるので、ワクチン接種や定期健診は積極的に受けましょう。

まとめ

猫の膵炎はまだ不明な部分が多く、病理検査でしか確定できない病気です。

症状や治療法をお伝えしましたが、慢性膵炎では症状があまり現れず飼い主が気づかないうちに、悪化してしますケースもあります。

食欲がないことや元気がない様子を「老化だから」と考えてしまわずに、猫の様子に変化を感じたら少し慎重になってあげてください。

早期に適切な治療を受けることで、軽度であれば完治する可能性が高く、重度の膵炎であっても治療の効果が期待できます。

日頃からよく猫の健康観察を行い、7歳からは定期的に動物病院で検診を受けましょう。

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