介助犬ってどんな仕事?歴史や向いている犬種など
2022/03/24
目次
介助犬の主な仕事内容
介助犬とは、体の不自由な人の手足となって介助し、社会参加の手助けをする訓練犬のことです。
盲導犬・聴導犬とともに「補助犬」と呼ばれていて、それぞれに仕事内容が異なります。
介助犬の仕事内容は、その主人である人(ユーザー)の身体障害の程度によって違いますが、家や外出先でユーザーを支える大切な仕事をします。
犬ができる動作は口にくわえることと前足で押すことの2つですが、この2つを応用して様々な介助を行います。
介助犬はユーザーの言葉による指示を理解し、その指示通り行います。
具体的にどんな仕事内容があるのかをまとめてみました。
手の届かない物を渡す&取ってくる
身体の障害のために、自力では手が届かない物がある場合、介助犬は指示された物を取ってきてユーザーに渡します。
例えば衣服やリモコン、バスや電車の切符など、犬が口にくわえて運ぶことでユーザーの助けとなるのです。
それによって離れた位置にある物や手が届かなかった物でも容易に使用でき、時間も短縮できるようになります。
必要な時に必要な物が手元に届くという保証ができるので、より快適な暮らしが期待できます。
指示されたものを入れる&出す
必要な物の名称を決めて、介助犬に覚えさせます。
そして指示された名前の物を、介助犬が探して持って来ます。
例えば冷蔵庫から食べ物や飲み物を持ってくることや、引き出しを開けて財布を出し入れするなど、いろいろな物の名前とそこにある物の名前を正確に判断します。
中でも緊急事態の際に携帯電話を探して持ってくることは非常に大切な仕事で、ユーザーの命を守ることにつながっています。
生活する中で必要となる物の名前はとても多いですが、訓練を通じて一つ一つの物の名前を覚えて実行できるようになるのが介助犬です。
落としてしまった物を拾う
ユーザーは障害のために体を動かすことが難しく、落とした物を拾うことができない不自由さを抱えていることが多いです。
一人暮らしの場合や外出先で誰かに頼むことができない時、拾おうとして転倒し、そのまま動けなくなると非常に危険な状態になります。
その時に介助犬はすぐにくわえて渡すことができるので、落としてしまった物を拾うことができない障害者にとっては、この動作が保証されることは、外出する際の自信になります。
そして危険を回避できる大切な仕事の一つです。
窓やドアを開閉する
身体が不自由なユーザーにとって、自動ドアがない場所ではドアを開閉することは難しいです。
窓の開閉も同じで、障害者には簡単にできません。
バリアフリー化が進んでいても、まだまだ窓やドアが自動で開けられるという状況ではありません。
しかし、窓やドアの取っ手に大きめのハンカチや紐を付けると、ドアの重さが軽い場合は、ほとんどのドアの開閉ができるようになります。
これにより、部屋の移動なども楽に行なえます。
ただし、重いドアはかなりの負担になるので、介助犬だけでは難しいこともあり課題です。
介助犬は前足や鼻を使って押したり、取っ手につけた紐をくわえて引っ張ったりすることで開閉します。
冷蔵庫などのドアの開閉もも同じようにして行います。
体位を変換する
脊髄の障害がある人は血行障害がおきないように定期的に体の位置を変える必要があります。
自分で手足を動かすことができない人のために、その手伝いを介助犬が行います。
体位の変換ができず、むくみができることを予防するために、介助犬が使用者の手足となり、指示した際に圧迫されている部分を動かすことが可能です。
また、寝ている姿勢から起きる時の介助や座った位置から立ち上がる時の介助、ベッドから車椅子に移る際の介助などもできます。
必要な時に呼ぶとその場所に来て、手助けをしてくれることはとてもありがたいことです。
介助犬は24時間いつでもそばに待機して、要望に応えてくれます。
介助犬の歴史
介助犬の歴史には諸説あり、はっきりと判明していないのですが、アメリカで初めての介助犬の育成がスタートしたのが1970年代だと言われています。
飼っていたペットを生まれつき身体が不自由だった子供のために介助犬として訓練したと言われています。
日本の介助犬第1号は1992年です。
事故で身体に麻痺を負った女性がアメリカで出会った介助犬を日本に連れて帰り、その犬が日本で初めての介助犬だそうです。
その後、トレーナーによる介助犬訓練が始まり、1995年に日本で訓練を受けた初めての介助犬が誕生しました。
1999年には介助犬の法制化に向けた検討が国会でも始まり、盲導犬・聴導犬・介助犬を「身体障害者補助犬」として認め、公共施設や病院、ホテル、飲食店などへの同伴受け入れが認められるようになりました。
介助犬に向いている犬種
一般的にラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバー、F1(ラブラドールとゴールデンのハーフ犬)などの大型犬が介助犬に向いています。
他にも、プードルの中でも大きいスタンダード・プードルも介助犬として活躍します。
なぜ大型犬が向いているのかというと、落とした物や指示された物を口にくわえて持ってくるという仕事は小型犬では難しいからです。
他にも体位の変換を手伝ったり、ドアの開閉なども力がある大型犬でないとできません。
また、レトリーバー系の犬は人と一緒に何かをすることを喜ぶ性格で、訓練性も非常に高く、優しいイメージなので社会に受け入れられやすいという理由もあります。
介助犬の訓練は1歳から適性があると評価された犬が候補犬として約2年間行います。
審査に合格すれば、ユーザーとの生活をともにして働き、10歳になると引退します。
介助犬が欲しい人に求められる条件
介助犬は住んでいる自治体に申請して、合同訓練を行い審査に合格して初めて「貸与」されます。
「貸与」とはつまり「犬を貸してもらっている」ということで、自分の飼い犬(ペット)ではありません。
介助犬が貸与されるためにはいくつかの条件があります。
その条件を次に紹介しますが、自治体によっても貸与条件が少し異なることがあるので、介助犬に関する情報を集めましょう。
介助犬の健康を守る
介助犬とはいつも一緒に行動し、生活全般をともにするので、ユーザーも犬のお世話をする義務があります。
食事や排泄の世話はもちろん、シャンプーやブラッシングをして清潔に保つことも重要です。
さらに、犬の健康を守ることも大きな義務です。
普段から健康観察を行い、定期的に健康診断や予防接種などを受け、健康管理を行う義務があります。
責任を持って犬の行動を管理し、できる限り世話することや愛情を持って接することでお互いの信頼関係が強くなり、良きパートナーとなれます。
身体障害者手帳を所持している
申請のためには身体障害の状況と身体障害者手帳が必要です。
自治体によりますが、身体障害者手帳2級以上で、肢体不自由の方などと限定されているパターンの場所もあるようです。
例えば盲導犬であれば視覚障害、聴導犬は聴覚障害、介助犬は肢体障害というように細かく障害の内容や程度が決まっていることが多いので、その点は住んでいる自治体のホームページをご覧ください。
適切な貸与かどうかの検討は重要事項ですので、この条件は必ず確認してください。
介助犬の表示義務を守る
介助犬の使用者は、パートナーの犬が介助犬であることを、きちんと示す義務があります。
外出する際には、大きく「介助犬」と書かれた胴着を犬が着ています。
ユーザーは身体障害者補助犬認定証と身体障害者補助犬健康管理手帳を常に持ち、いつでも提示できるようにしなければいけません。
介助犬は法律で認定された補助犬として、様々な権利が守られています。
ですから、正しい事実を表示し、トラブルを防ぐためにも大切な義務です。
合同訓練に参加できる
介助犬を迎えたいと申し込みをした後、訓練センターで犬との合同訓練が実施されます。
約40日~50日に渡って泊まり込み、介助犬への指示を出すこと、食事やブラッシングなどの日常の世話の仕方、室内や屋外での介助訓練、施設へ同伴する訓練など一通り行います。
そして認定審査に合格して初めて、介助犬のユーザーとなり、自宅で一緒に生活が始まりますので、この合同訓練はその第一歩として重要なものです。
介助犬を世話する際の費用を払える
介助犬は無償で貸与される決まりですが、病院を受診する費用やエサ代などは基本的に自己負担となります。
社会的に自立している人を支えるのが目的なので、収入もある程度は必要となってきます。
毎年1回義務付けられている狂犬病の予防接種は3,500円前後、感染症予防のためのワクチンは種類によっても違いますがおよそ8,000円前後です。
その他にもドッグフードや食器、トイレなどグッズとして準備が必要なものがあります。
約8年間介助犬は生活を支えてくれる存在なので、家族の一員として健康で過ごしやすい環境を整えるのも人間の義務となります。
18歳以上に達している人
基本的に介助犬は18歳以上の障害を持つ人が、積極的に社会に参加できることや自立することを目的として、貸与がなされているため、年齢条件があります。
自治体によっては、65歳までという上限がついているところもあります。
つまり、介助犬は介護をするのが目的ではないので介護保険の対象とはなりません。
障害を持つ高齢者の人が在宅で介助犬の支援を受けているというケースもありますが、こちらは特別なケースでしょう。
個人の状況や自治体によっても異なりますので、問い合わせをして確認してください。
まとめ
介助犬と一緒に生きることで、多くの身体障害者の方が外出が容易になり、社会参加をすることができています。
寝たきりの病気を持っていた人が介助犬のおかげで初めて青空を見たという感動も味わえています。
24時間ともに過ごす介助犬は、その仕事を楽しんでできるように訓練され、一人でも多くの障害者の方が社会で自立し生き生きと過ごせるように人間のために働く犬なのです。
介助犬の訓練はボランティアや寄付で成り立っている事業なので、関心がある人は参加も検討されてみてください。
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