盲導犬になる犬種とは?盲導犬の誕生から、犬種の向き不向き、その理由など

2022/03/22

目次

盲導犬になる犬種とは?

盲導犬はご存知の通り、目が不自由な人が安全に外出できるようにサポートする犬です。

盲導犬についてはメディアでも取り上げられることが多いですね。

感動的な話題などがよく知られていますが、盲導犬に選ばれる犬種は決まっているのでしょうか。

どんな犬種でもなれるのか、不向きな犬種があるのかについて解説していきます。

あまり街中で見かけることはない盲導犬ですが、どのような性質が向いているのか見ていきましょう。

ラブラドールレトリーバー

おっとりした性格をしていて、元々使役犬だったため、とても従順な犬です。

平均寿命が12年~14年で、盲導犬として働ける年月も長いです。

身体は大きくても、垂れ耳と愛嬌のある顔つきで周囲から親しみやすい外見もポイントでしょう。

また、人懐こく人間と一緒に作業をすることが大好きな犬で、好奇心を生かして楽しく訓練に取り組めるところが盲導犬に向いています。

短毛で手入れがしやすいところも視覚障害者の人には適している点です。

これらの様々な点から、日本では盲導犬の80%以上がラブラドールレトリーバーです。

盲導犬を扱った映画などでも多くがラブラドールレトリーバーを使っているでしょう。

ゴールデンレトリーバー

ラブラドールよりも好奇心が強い性格で、育成訓練に向いている犬種だと言われています。

明るく陽気な性格で、飼い主にも忠実であり、ラブラドールと同様、人のそばにいること、人と一緒に作業することが大好きです。

環境に順応する能力も高く、外見も愛らしく親しみやすいのでよく知られている犬種でもあります。

名前は同じ「レトリーバー」と付いていますが、犬種としては違います。

長毛のふわふわとした毛並みが美しいのですが、お手入れが大変という理由があり、日本では盲導犬としては少ないようです。

ただ、海外では盲導犬として多く活躍されています。

最近ではラブラドールとゴールデンのミックスで「F1」と呼ばれる犬種が日本でも盲導犬に適しているとして採用されています。

盲導犬の誕生の歴史

盲導犬はいつ頃から誕生したのでしょうか。

盲導犬第1号は1916年にドイツで誕生しました。

しかし実際はもっと以前から目の不自由な飼い主を犬が助けている様子があちらこちらから発見されています。

犬と人間の繋がりは古くから存在していたのです。

次に盲導犬の歴史をたどってみましょう。

ヨーロッパが起源とされる盲導犬

紀元1世紀のイタリアのポンペイの壁画や、17世紀の書籍などに盲導犬らしき犬の姿が描かれていました。

犬が飼い主を助ける行動は自然と見られたものでしたが、現在のような盲導犬の訓練をするようになったのは、20世紀になってからです。

第1次世界大戦で多くの人が重傷を負いました。

ドイツのスターリン博士は、犬が視覚障害者を助けられるのではないかと考え、1916年世界初となる盲導犬訓練学校が設立されました。

3年後には539頭の盲導犬が生まれ、アメリカやイギリスでも盲導犬協会が誕生することとなり、世界に広がっていきました。

日本に初めてやってきた盲導犬

1938年(昭和13年)、アメリカ人のゴルドン氏は盲導犬を連れて日本を訪れました。

日本が盲導犬という存在に出会った瞬間だと言えるでしょう。

翌年、ドイツで育った4頭の盲導犬が輸入され、失明した人の社会復帰に貢献しました。

その後戦争の混乱で盲導犬は次々と亡くなり、育成事業も途絶えてしまいました。

1948年、塩谷賢一氏が盲導犬育成を開始し、1957年日本での第1号となる盲導犬チャンピィが誕生しました。

盲導犬に不向きの犬種

盲導犬になるには、能力と訓練を楽しんで取り組める性格が大切だと言われます。

先程あげたラブラドールやゴールデンレトリーバーはその点がとても適しています。

また多くの人や動物と会う機会が多いため、攻撃性がなく順応性が高いことも重要です。

現在800近い犬種がありますが、その中でも盲導犬には向いていない犬種はどれなのか、その理由とともに説明します。

和犬やミニ・トイ

柴犬や甲斐犬、秋田犬などの和犬、ミニチュアダックスやトイプードルなどの小型犬は盲導犬には不向きです。

盲導犬は使用者の目となって歩き、危険から守ることが仕事です。

障害物を避けるために身体を張って危険から使用者を守ることもあります。

ですから、大型犬でないとその役目を全うすることはできません。

また昔はシェパードが多かったのですが、見た目が精悍で犬が苦手な人にとっては怖いという印象を与えるため、レトリーバー系を採用することになりました。

和犬も精悍な犬が多いため、そういう外見的な理由も加わっています。

盲導犬に不向きと言われる理由

和犬やミニ・トイの犬種が盲導犬に不向きである理由は、外で飼われる番犬としての役割を果たしてきたためだと言われています。

番犬としての歴史がある犬も今では家族同様に過ごすことが多く、小型犬も可愛がられていますので、人間に懐き、飼い主への愛情を持っています。

しかし、盲導犬はペットではないため訓練性という点では難しいと言えるでしょう。

視覚障害を持つ使用者が安全に進めることを第一に考えた訓練を楽しんで行えるという性格はどんな犬種でも持てるものではありません。

好奇心が高く、人と一緒に作業をすることが求められます。

犬種関係なく性格が不向きな場合も

盲導犬に向き不向きの犬種はありますが、ラブラドールなどの向いている犬種なら全てが盲導犬になれるのかというとそうではありません。

候補犬として生まれても、実際に訓練を行ってみて盲導犬に向いていないと判定される犬も少なからずいます。

不向きと言われる犬には活発すぎる、吠えるなど様々な理由があり、我の強い性格の犬も多いです。

盲導犬に適した、または不向きという線引きは、最終的にその犬のそれぞれの性質によるのです。

盲導犬が誕生してから引退するまで

盲導犬が誕生してから引退するまでの一生とはどのようなものなのでしょうか。

訓練を受ける期間は半年から1年と言われ、その後約8年間盲導犬として働きます。

2021年3月時点で実働している盲導犬は861頭いますが、彼らの一生を順に見ていきたいと思います。

盲導犬の生涯①:誕生から子犬時代

まずは、元々盲導犬に適した性質を持った健康的な両親から生まれた子犬であることが前提です。

生後2ヶ月になると母犬のもとを離れて、一般のボランティア(パピーウォーカー)に育てられます。

ここで人間からの愛情をたっぷりと受け、一緒に過ごすことが楽しいことや社会のルールを学びます。

1歳になったら、パピーウォーカーから盲導犬訓練センターに返されて、訓練を受けます。

そして、盲導犬候補の訓練を受けて、試験を合格した子犬のみが盲導犬に選ばれます。

盲導犬の生涯②:訓練

1歳を過ぎたら、パピーウォーカーという場所から、盲導犬訓練センターへ返され、盲導犬になるために必要な訓練を行う日々が始まります。

訓練期間は半年から1年ほどです。

盲導犬になるための訓練は、基本的な「シット」や「ダウン」などの動作を行うこと、人を安全に誘導するための誘導訓練があります。

道の角や段差の教え方や障害物を避けて歩く訓練、エスカレーターや電車に乗る訓練などを繰り返し行います。

また、動いている車やバイクなどに危険を察知し、犬自らが進むかどうかを判断できるという訓練も必要です。

盲導犬の生涯③:盲導犬使用者との訓練

たくさんの訓練を行いながら、訓練士によって評価をし、盲導犬に向いているかどうかを判定します。

この時点で向いていないと判断された犬はキャリアチェンジ犬と呼ばれ、別の道へ進みます。

盲導犬の候補犬となった犬は実際に盲導犬使用者との共同訓練がスタートします。

いよいよ本番の準備に入るのです。

実際に目の不自由な方と歩行訓練を行ったり、日常生活の過ごし方などを使用者と一緒に学びます。

約4週間、訓練センターで共に暮らしながらパートナーとして過ごすための訓練です。

盲導犬の生涯④:盲導犬として送る生活

盲導犬使用者との共同訓練を問題なく終えることができたら、ようやく盲導犬として暮らし、パートナーを支える日々がスタートします。

通勤や通学、買い物など普段利用する道できちんと安全に歩けるかどうかを訓練士が確認します。

その後も定期的に担当する訓練士が訪問し、フォローアップをします。

使用者は毎年の予防接種や健康診断、日頃の健康観察を必ず行い、訓練士にも報告する義務があります。

そうして、盲導犬とパートナーは共に安心して助け合いながら暮らしていきます。

盲導犬の生涯⑤:引退

10歳頃まで盲導犬として使用者を支えたら、その使用者との別れがやって来ます。

つまり盲導犬の引退です。

その後は引退犬飼育ボランティアの家庭で普通の犬としての生活を送ったり、のんびりと余生を仲間達(元盲導犬)と過ごしたりします。

もう、お仕事のためのハーネスはつけません。

使用者は引退犬の様子を聞いたり、会いに行くこともあります。

まとめ

盲導犬に向いている犬種や一生についてまとめてみました。

訓練を終えて一生懸命お仕事をしている盲導犬は、視覚障害がある人の命を守る役割を果たしています。

ハーネスを付けて仕事をしているときは集中できるように、犬に声をかけたり触ったりしないようにしましょう。

盲導犬の一生にはボランティアの役割も大きいです。

関心がある人は詳しく調べてみるのも良いですね。

盲導犬への理解が進み、いたずらや同伴拒否などがなくなることを願っています。

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