犬に必要な2種類のワクチンとは?種類や予防できる感染症を解説

2022/04/24

目次

ワクチンとは?

犬には感染力が強く発症すると重症になる怖い病気がいくつかあります。

これらの病気にかからないように免疫をつけておかなければなりません。

子犬の時には母犬を胎盤と通じて、また母乳で免疫が作られ、ウィルスや細菌から身を守る抗体ができます。

しかし、8週から12週の時期にこの最初の抗体はなくなってしまいます

自分の力で抗体を作るためには感染症に一度かかる必要があります。

その感染症の代役をしてくれるのがワクチンです。

ワクチンは発症しない程度に毒性を弱くした病原体を体に入れることで、その病気への抗体を作ります。

実際には感染していなくても、その病気への免疫ができるわけです。

ワクチンをうつことによって、同じ病原体が体に入ると、抗体がそれを攻撃し、病気を発症せずに済んだり症状が軽く済むようになります。

[法律で義務化]されている狂犬病予防ワクチン

犬のワクチン接種は2つの種類があります。

一つは飼い主の義務として法律で定められている狂犬病予防接種です。

狂犬病予防接種は、生後3ヶ月以降の犬が年に1回受けることが「狂犬病予防法」で決められています。

ーーーー狂犬病とは?ーーーー

犬や人を含む全ての哺乳類が感染する病気で、有効な治療法がなく、発症すると100%死亡する怖い病気です。

人はほとんどの場合、犬から感染しているため、狂犬病予防法で飼い犬への接種が義務付けられているのです。

日本では1975年以降狂犬病の発症はありませんが、海外ではまだ発症が多く、年間100人以上が狂犬病でなくなっている国もあります。

海外旅行や輸入された動物により狂犬病が入ってくる危険性があるため、犬だけでなく人間や他の動物を守るためにも必要なワクチンです。

ただし、狂犬病ワクチンで副作用が出る場合や心臓疾患・腎不全などを患っている犬は接種が猶予されます。

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[任意接種]のワクチンと予防できる感染症

もう一つは、混合ワクチンと言われる任意で受ける感染症予防接種です。

混合ワクチンは、犬が感染すると非常に重い症状になる病気の予防ワクチンです。

特に子犬は感染のリスクが高く、死の危険もあるので命を守るために必要です。

これらのワクチンは犬を守り、また犬から犬へ、犬から人へ感染する「人獣共通感染症」を防止する役割もあります。

さらに任意接種のワクチンは、下記2種類があります。

●コアワクチン
 致死率が高く全ての犬が必要(パルボウイルス、ジステンバー、アデノウイルス、など)

●ノンコアワクチン
 住んでいる地域や環境に応じて感染リスクが高いときには接種することを進められている(レプストピラ、パラインフルエンザ、ボルデテラ・ブロンギセプチカ、など)

次に、予防できる感染症をそれぞれ詳しく紹介します。

パルボウイルス感染症

パルボウィルスは数カ月間生存するほど非常に感染力が高く、重度の胃腸炎や出血性の合併症を起こします。

命の危険が高い感染症です。

激しい嘔吐や下痢、血便、発熱、脱水、体重減少などの症状が出て、心臓にもダメージを与えます。

悪化するとショック症状を引き起こして死亡することがあり、特に子犬は死亡率が非常に高いです。

また妊娠中の犬が感染すると、流産や死産の原因にもなります。

感染している犬は糞便に大量のウイルスを排出し、その便や嘔吐物に触れて感染することが多いです。

ウイルスそのものを排除する治療法はなく恐ろしい病気ですが、ワクチン接種により予防することができます。

ジステンパーウイルス感染症

ジステンバーウイルスは人の麻疹(はしか)とよく似たウイルスで強い感染力があります。

感染症の初期症状は、目やに、鼻水、食欲の低下、発熱で、次第に下痢や結膜炎、白血球の減少などがでます。

さらに進行するとジステンバー脳炎を起こし、震えやけいれん、後ろ足のマヒのような神経症状が現れます。

また鼻や肉球の皮膚が硬くなるハードパッドもこの病気の特徴です。

有効な治療法がなく、致死率が高い病気であり、昔ニホンオオカミがこの病気で絶滅しました。

回復しても神経症状が後遺症として残ることが多いです。

感染した犬の目やに、唾液、鼻水、排泄物に触れると感染します。

また近い距離では空気感染します。

レプトスピラ感染症

レプストピラは細菌で、世界には約250種類以上もの血清型があります。

その中の数種類が混合ワクチンに含まれています。

感染した動物(ネズミや犬)の尿の中に細菌が排泄され、川や沼などを汚染します。

その水を飲んだり、足の傷口から感染したりします。

川などで水遊びをした後にかかる犬が多いようです。

軽症の場合もありますが、尿毒症、腎炎などを起こしたり、けいれんや黄疸など重症化することもあります。

人にも移る人畜共通感染症です。

またこのワクチンは免疫が持続しません。

長くて半年間ですので、接種時期を考える必要があります。

犬パラインフルエンザウイルス感染症

咳、鼻水、発熱等の風邪に似た症状が出るため、ケンネルコフ(犬風邪)とも呼ばれています。

咳やくしゃみなどの飛沫から感染し、集団内で広がっていきます。

競技会やドッグショーのような犬がたくさん集まる場所に行く機会が多ければ、注意が必要です。

多頭飼育で一頭がかかると他の犬もうつる危険が高いです。

しかし、人には感染しません。

一般的にこの病気は単独では症状が軽く、他のウイルスや細菌と混合感染すると症状が重くなります。

軽い場合はカラ咳だけで食欲も変わりませんが、進行するとゼーゼーと痰が絡んだり嘔吐することもあります。

ボルデテラ・ブロンキセプチカ感染症

犬の気管支敗血症菌による感染症で、犬、猫、うさぎなどの小型の哺乳類に多く見られます

犬パラインフルエンザウイルスを一緒に感染することが多いので重症化が心配な病気です。

パラインフルエンザウイルスでも説明したようにケンネルコフという風邪に似た症状を引き起こし、免疫力が低い子犬や高齢犬では肺炎になりやすいので注意が必要です。

寒い冬の時期に多くみられるため、体温が低下しないようにしましょう。

合併症がなければ2~3週間で自然と症状が治まっていくため問題はありませんが、食欲低下が続いたり下痢やけいれんなどが見られた場合は、より深刻な感染症の場合もあるのですぐに獣医の診察を受けましょう。

犬伝染性肝炎(アデノウイルス1型)

アデノウイルスには1型と2型があり、1型は犬伝染性肝炎で肝臓にダメージを与えます。

嘔吐や下痢、発熱などの症状が出て、他にも肝炎により血が混ざった腹水が溜まったりします。

重症化すると肝臓の機能不全や血管内に血栓ができやすくなって、全身の血管に詰まるという症状に陥ることもあります。

また回復期には腎炎やブルーアイが起こることがあります。

ブルーアイとは角膜が腫れて目が青白く見えることです。

ワクチン接種後にブルーアイの症状が出ることもあります。

犬伝染性生肝炎は感染しても発症しない犬もあり、軽症から重度までさまざまです。

現在はアデノウイルス2型ワクチンにより1型も同時に予防できることになっています。

犬伝染性喉頭気管炎(アデノウイルス2型)

アデノウイルス2型による犬伝染性咽頭気管支炎は、多くの病原体が原因となるケンネルコフ(犬風邪)の原因の一つです。

パラインフルエンザ感染症と同じです。

このウイルス単独では症状は重篤なものにはなりません。

感染した犬の排泄物などに接触したり、近い距離では空気感染が起こります。

集団の中で広がることが多いので、犬が多く集まる場所での感染が心配な病気です。

競技会やドッグショーなどに参加する機会が多い時には十分注意しましょう。

混合ワクチンを受けることにより、1型の伝染性肝炎と同時に予防することが可能なのでワクチン接種を必ず行いましょう。

犬にワクチン注射した際の副作用は?

犬には致死率の高い病気もあるため、これらの病気から守るワクチンを摂取しなければいけないことがよくおわかりになったと思います。

狂犬病・混合ワクチンの接種ができていないと使用を断られる宿泊施設やドッグラン等もあります。

ただ残念ながら、ワクチン注射の副作用が出る可能性はあります。

発生率は低いものの、脱毛・食欲不振・微熱・関節炎・貧血・過敏症・注射部分の痒みやはれなどが発症します。

重症の場合はアナフィラキシーショックを発生することもあります。

下痢などの体調不良、病気を持っている、高齢犬等の場合は特に慎重にワクチン接種を考えるべきです。

獣医とよく相談して決めましょう。

接種をする際は午前中にワクチン接種を受け、できれば30分程度は病院で様子を見るのが理想的です。

2~3日は激しい運動は避けて、シャンプーやトリミング等も1週間程度間隔を開けた方がよいでしょう。

ワクチン注射の値段や頻度は?

狂犬病ワクチンは毎年春頃に登録している市町村から接種のお知らせが届きます。

集合接種に行くか、病院で受けるかは個人で選ぶことができます。

混合ワクチンの値段は動物病院によっても多少違います。

また頻度については、子犬の場合はワクチンプログラムにより抗体がしっかりと作られるように接種しなければなりません。

成犬になってからは、抗体検査を受けて抗体が少ない場合にはそのワクチンだけを接種するという方法が理想的です。

値段

狂犬病の集団接種は3,000円前後で、「狂犬病予防注射済票交付手数料」が一律で550円かかります。

動物病院で接種する場合は自由診療なので少し値段が高くなることもあります。

混合ワクチンに関しては2種から11種まであり、値段が変わってきます。

一般的によく使われるのは5種~8種です。

飼育環境や地域での感染状況など、獣医と相談して何種のワクチンをうつか決めましょう。

動物病院によって多少違いはありますが、5,000円~10,000円程度になります。

また病気治療ではないためほとんどペット保険の対象外となります。

頻度

子犬のワクチン接種は6~8週に1回目、その後3~4週を開けて2回または3回を接種するのが一般的です。

成犬になってからの追加接種は1年毎に混合ワクチンを接種ということが今までは言われていますが、世界小動物獣医師会ワクチネーションガイドラインではしっかりと抗体ができていれば3年毎にコアワクチンを接種することが推奨されています。

ノンコアワクチンは地域的な感染例もあるため、1年での接種が勧められています。

年齢や副作用の有無、持病など状況は異なるので、かかりつけの獣医とよく相談して適切なワクチンプログラムを受けましょう。

まとめ

犬のワクチンを受けることで感染症から命を守ることができます。

また犬から他の犬や動物・人間にも感染する病気があるため、感染症を侮ることなくきちんと接種を受けましょう。

狂犬病ワクチンが広く普及したことで、日本は世界でも少ない狂犬病のない国になっています。

それを守れるように飼い主の義務を果たしたいものです。

ただワクチンは異物を体内に入れるもので副作用もあるため、接種する時の犬の状態や頻度についてもよく考えて必要なワクチンを適切に受けましょう。

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