犬の心臓病とは?心臓病の原因やステージごとの症状など詳しく解説
2020/05/30
目次
犬の心臓病とは?
犬の心臓病は10~15%に起こると言われています。
心臓がポンプとして働くためには、心臓の筋肉や弁が正しいリズムで動き、血管に血液をスムーズに送り出すようにしなければいけません。これらのどの部分に異常が起きても、心臓はきちんと働く事ができず、心臓病になってしまうのです。
心臓病になると、心臓がポンプとしての役割を果たせなくなり、全身に血液を送る事ができなくなっていきます。
その結果、全身に十分な酸素や栄養を送る事ができず疲労や呼吸困難、食欲の低下などが見られるようになり、体に水分がたまるようになると浮腫みが出たり、お腹がふくれる事があります。
そんな心臓病ですが、その中でも最も多い心臓病は僧帽弁閉鎖不全症というもので、次にこの僧帽弁閉鎖不全症についてご紹介していきます。
最も多い心臓病は僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁は、左心室と左心房の間の弁で、左心室から大動脈へ血液を送り出す時に、血液が左心房へ逆流するのを防いでいます。この弁が変性し、上手く閉まらなくなると、血液が左心室から左心房へ逆流します。
弁の変性は、5歳以下の犬にはまれですが、例外なのが、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルで、若くして弁の変性を起こすことがわかっています。
僧帽弁が上手く閉じなくなってしまうと、血液の一部が逆流してしまうので、全身へ上手く血液を送り出せなくなります。
初期の段階では、心臓が頑張って働く事により、全身に大きな影響はありませんが、頑張り続けた心臓が限界を抑えると、血液を十分に送れなくなり、心不全の状態になります。
早期の場合は、無症状で、定期健診時などに心臓の雑音によって発見される事がほとんどですが、一番最初に見られる症状は咳で、痰を吐き出すような咳が、主に興奮時や夜~朝方に認められるようになります。
更に進行すると、疲れやすくなったり痩せてきたりといった症状が出るようになります。
そこから更に心不全の状態へ進行すると、肺の中で血液が鬱滞し、肺水腫となり、チアノーゼが見られるようになったり、不整脈による失神が見られるようになり、死亡する可能性もある怖い病気です。
早期発見が大事になってきますので、定期的な健康診断と少しでもおかしな咳が見られるようであれば受診しましょう。
犬の心臓病の症状
心臓病が早期の場合、自覚症状は全くありませんが、心臓病が進行してくると咳や疲れやすくなったり、浮腫み・腹水・失神・呼吸困難・突然死などの症状を示すようになります。
その中でも典型的な症状は咳なのですが、咳をしているから心臓病だと言うわけではありませんが、中型犬以上の犬の場合は、心臓病が原因で咳をするケースが非常に多くなっており、小型犬の場合は、心臓病以外、たとえば気管の障害が原因で咳をする事が多いのですが、それでも高齢の小型犬が咳をすれば、やはり心臓病を疑う必要があるでしょう。
初期症状はないと先ほどご紹介しましたが、ほとんどの心臓病で初期から心雑音というものが出てきます。
心雑音は聴診器を使用すればすぐにわかりますが、飼い主さんにはわからない事なので、予防接種の際や定期健診の際など定期的に聴診を受ける事が大切です。
犬の心臓病のステージ分類
心臓病の正常な血液の流れは全身→右心房→右心室→肺→左心房→左心室→全身となるのですが
心臓病の場合は
全身→右心房→右心室→肺→左心房→左心室→左心房→左心室→全身
という異常な血液の流れになってしまいます。
犬の心臓病にはステージ分類がされており
・ステージA
・ステージB1
・ステージB2
・ステージC
・ステージD
と分かれています。
次の項目からステージ分類別に詳しく状態などをご紹介していきます。
ステージA
まずは、ステージAについてご紹介していきましょう。
ステージAに分類されるのは心疾患のリスクがある犬種となっています。
具体的にあげると、中高齢の室内犬・キャバリアキングチャールズスパニエル・レトリーバー・ボクサー・ニューファンランド・ジャーマンシェパードドッグ・チワワ・ポメラニアン・ヨークシャテリア・フレンチブルドッグ・ビーグル・ミニチュアシュナウザー・ボクサー・サモエド・ドーベルマン・プードル・ポメラニアン・マルチーズ・コリー・シェットランドシープドッグ・グレードデーン・セントバーナードなどになります。
ご紹介した全ての犬種が心臓病になるとは限りませんが、高齢になると出てきやすくなりますので、定期健診か欠かさず受けるようにしましょう。
ステージB1
ステージB1に分類される状態は、聴診により心雑音が聞こえるが、症状はないという状態です。
正常では左心室の血液は全身に流れますが、この病気では血液の一部が左心房にも流れてしまうため、全身に流れる血液の量が減少してしまう事がわかっています。
心臓病の初期では、全身への血液量を減らさないように、心臓が頑張って働いている状態です。
ステージB2
ステージB2の分類は、症状はないが、だんだん心臓が大きくなっている状態です。
頑張り過ぎた心臓はポンプ機能が次第に低下していきます。
すると、全身に送れなかった血液が徐々に心臓にたまっていき、心臓はゆっくりと大きくなっていきます。
特に左心房は、血液を送り出したはずなのに逆流によって血液が帰ってきてしまうため、顕著に大きくなっているのがわかるようになります。
ステージC
ステージCに分類される状態は、さらに心臓が大きくなり症状が現れる状態と肺や全身の臓器に異常がでてくるという状態です。
心臓病で現れる症状は様々ですが、最初に見られるのは咳や運動不耐性が多いです。
咳の症状は、左心房がどんどん大きくなり、気管を押し上げてしまう事で起こります。
また、運動不耐性とは運動を嫌がるようになったり、すぐに疲れやすくなったりする事です。
そして、全身の臓器に異常が出てくる状態というのは、血液の流れが悪くなり左心房がどんどん大きくなると、次は肺に血液がたまってしまいます。必要以上に肺に血液がたまると肺水腫という状態に陥り、呼吸困難で救急搬送されるケースも見られます。全身に送り出す血液量も減ってしまいますので、様々な臓器に影響が出ますが、特に腎臓の働きが著しく悪くなるケースが多いでしょう。
ステージD
ステージDに分類される状態とは、難治性心不全の状態になります。
心不全とは、心臓の機能が低下し、全身に血液や酸素が十分に送り出せなくなる状態の事です。
症状としては、息切れ・疲労感・呼吸困難・浮腫・動悸・胸痛などがあり、重症化すると安静時でも症状が現れるようになります。
難治性心不全とは、心不全がさらに重症化した状態で、強心剤が必要となるくらい悪い状態になっており、予後は極めて不良となります。
通常の治療法では、効果がなく、補助循環治療や心臓移植が必要となるレベルです。
犬の心臓病への治療薬について
犬の心臓病への治療薬は初期段階では、血管拡張薬という血液の巡りを良くして心臓の負担を軽くする薬を使用します。
しかし、投薬を行うという事は、体に何らかの変化を与える事にもなりますので、その変化を飼い主さんはきちんと理解しておく必要があるでしょう。
薬を処方された時には、その薬がどんな風に体に作用するのか、そのために気をつける事は何なのか、飼い主さんも積極的に先生に質問して下さい。
最終的に心臓病は投薬のみで良くなる事もありますが、一般的には手術が必要なケースの方が多いので、薬のみで治療したいのか、手術のケースも考えて治療したいのかを先生としっかり相談しましょう。
投薬だけでの半年後の生存率は50%と言われる
手術成績が向上しても現在、僧帽弁閉鎖不全症の手術を積極的に行っている獣医師は、全国レベルを見てもそう多くはありません。日本国内では極わずかと言えるでしょう。
ですので、実際には投薬治療のみで対処されているケースがほとんどになりますが、実際手術が出来ないケースも多くあります。
てんかんなど、他の重篤な病気を併発している場合や、体力的に麻酔や人工心肺を使用する事が難しい時には投薬と定期健診で診ていくしかないのです。
僧帽弁閉鎖不全症の投薬治療を開始した場合、約半年後の生存率が50%と統計が出ており、発症した時点で既に高齢であれば、その半年は犬にとって十分な年月だと言えるかもしれません。
しかし、若くして発症してしまった場合の半年はあまりにも短すぎますよね。投薬治療と言っても、病気を根本的に治すものではなく、対処療法になりますので、進行してしまった場合は残念ですが、もう走りまわる事はできないと考える方がいいでしょう。
でも、現在の医学は日々進歩していますので、素晴らしい薬も沢山あります。望みは捨てないで下さいね。
薬の副作用はある?
薬の使い始めは、飼い主さんの目にもはっきりわかるくらい、しっかり効く事が多いのですが、副作用が全くないという薬はありませんので理解しておきましょう。
例えば、心臓病の薬を飲み始めて肝臓や腎臓の検査数値が上がってしまい、それらに対する薬を追加しなければならない事もあります。状態に合わせて薬を調整していくうちに、1回の服薬が7錠ではおさまらなくなってしまいます。
薬で体調をコントロールしているわけですので、飲み忘れは絶対にいけませんし、そのプレッシャーは飼い主さんにとってプレッシャーになっていくはずですが、1回でも薬を忘れてしまうと命の危険にさらしてしまうという結果になりかねません。
しかし、手術をするにも相当なリスクが伴ってしまうという事も考え、最終的には手術をするのか内科的治療でいくのかは飼い主さんの判断のゆだねられます。
愛犬の年齢や症状、正確などを考慮して治療方法を選択するようにしましょう。
そして、投薬のみで治療をする事になっても、完治する薬ではないという事を理解した上で薬でのコントロールを続けるようにして欲しいと思います。
まとめ
今回は犬の心臓病についてご紹介してきました。
心臓病の中でも最も多い僧帽弁閉鎖不全症にスポット当てて詳しくご紹介してきましたが、この心臓病は罹ってしまったら絶対に死んでしまうという病気ではありませんが、出来るだけ早期発見が望ましい病気です。
若い年齢でもまれに罹りますが、大半は高齢になってからですので、日頃からの定期健診は必須になってきます。
元気であっても、咳が出たり、普段と違う様子が見られる場合は、すぐに受診するようにしましょう。
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