愛犬のてんかんに良い食事療法とは?てんかんについて詳しく解説!
2020/03/01
目次
犬のてんかんとは?
てんかんとは、脳の何らかの異常や、脳への外傷、もしくは遺伝、ストレスなどを原因とするとされる、部分的または全身的な発作です。
てんかんの発作で死亡するケースはほとんどないと言われていますが、発作の度合いには個体差があり、身体の一部が痙攣する部分発作、全身が激しく痙攣する全身発作が主な特徴で、意識がボンヤリするものから完全に意識を失ってしまうものまで、その症状は多岐にわたります。
発作の頻度はその時の状況によって変化しますが、繰り返し発作が起こるケースが多くなっています。
愛犬のてんかんに良い食べ物は?
一般的に、てんかんの予防に効く食べ物として、以下の食材が良いとされています。
ただし、犬のアレルギーな好みなどもありますので、無理矢理与えるようなことは控えましょう。
◇納豆
てんかんの原因の一つに、マグネシウムの不足が関係することがあります。
マグネシウムは神経細胞を鎮静化させる効果のあるギャバを産生する物質です。
納豆にはマグネシウムが豊富に含まれており、フリーズドライの納豆でも同じ効果が期待できます。
◇煮干し
納豆同様、マグネシウムを豊富に含む食材です。
◇亜麻仁油
オメガ3脂肪酸は脳の神経系疾患に効果的な食材です。
亜麻仁油に多く含まれるほか、魚の油からも摂取することができます。ドライフードから摂取する場合は、DHAなどを含むオメガ3脂肪酸が全体の1%以上含有されていると効果を期待できるようです。
◇さつまいも、かぼちゃ
脳に必要な糖質を補うことができます。ただし、摂り過ぎには注意が必要です。
◇鶏ささみ
ナイアシンを豊富に含み、脳神経の働きを助けます。
糖質や脂質の代謝を促す効果が期待できるため、鶏アレルギーである場合を除き、有効な食材と言えるでしょう。
愛犬のてんかんの食事療法について
①ドッグフード
特にアレルギーが無い場合は、てんかんに必要とされる栄養素を一定量含有するフードを探してみるのも一つの方法です。
抗酸化物質(脳を酸化させない物質)であるビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、ミトコンドリア(α-リポ酸、L-カルチニン)、そしてオメガ3脂肪酸などを含むフードに切り替えてみるのも良いでしょう。
②腸内環境に効果的な食材
一見無関係に思えますが、腸内細菌によって産生されるビタミンB6がてんかんの犬に欠乏しやすくなる場合があります。
ビタミンB6は神経細胞に影響を及ぼす栄養素であるため、腸内環境を整える食材(ヨーグルト、乳酸菌など)を食事に取り入れることにより、てんかん発作の緩和が期待できることもあります。
③サプリメント
脳に良いとされるギャバやDHAなどを含む犬用のサプリメントの利用も効果が期待できます。
即効性があるわけではありませんが、獣医さんに相談の上で利用することも良いかもしれません。
この他、人間のてんかん患者の食事療法として、糖質を制限し、脂質で補うという「ケトン食」が注目されていますが、犬ではまだ効果は認められていません。
ケトン食を実践している人間の患者さんの場合はアイスクリームなども工夫して食べていたりするようですが、犬にアイスクリーム自体良いとは思えないため、ここでは紹介するのを控えます。
また、上記で紹介した食事療法を行えば、必ず完治するという保障があるわけでもありません。
偏りのある不自然な食事とならないよう、獣医さんとよく相談の上で与えることをおすすめします。
犬のてんかんの症状と発作
意識の有無、部分的、全身的と個体差の大きい発作が起こりますが、例えば脳の障害が問題だった場合は、その脳が司る身体の神経箇所により現れる症状は異なります。
例えば右前足に影響を及ぼす脳の神経に異常が発生した場合、発作(痙攣や引きつり)は右前足にのみ起こります。
そのため、一度てんかんと診断された犬の発作の症状は、ほぼ同じ内容を繰り返すことが多いと言われています。
①前兆となる発作
◇一点を見つめて動きが止まる
◇胃部の不快感がある様子がうかがえる
◇不安そうに動き回り、落ち着きがなくなる
以上のような行動が見られるとされていますが、どの行動も他の原因でも起こりうるものであるため、すぐにてんかんの発作だけを疑うことには危険があります。
慌てて余計に犬にストレスを与えないよう、落ち着いて状況を見守りましょう。
ただし、万が一てんかんの前兆となる発作だった時のことを考慮し、その時の状況、時間、少し前に何を食べたか(食べ物で発作が誘発されることもあるため)などを把握しておくことも大切です。
②部分的な発作
◇意識はあるが、身体を自分の意思でコントロールできていない様子がうかがえる
◇不自然な様子で辺りを動き回る(呼びかけに反応しない)
◇突然吠えたりして落ち着かない
◇身体、顔、足などに強張りがある
◇よだれ(もしくは白い泡)が口から出ている
部分的は発作は、時に全身的な発作の前兆であることも考えられます。
原因の特定や治療法の選択に必要なため、このような状態が見られた時は、獣医さんに伝えられるよう注意して様子を見るようにしましょう。
③全身的な発作
◇さらに、全身が痙攣を起こす(四肢の激しいバタつきなど)
◇奇声を発したり、嘔吐、脱糞、失禁などを起こす
上記のような状態全てが起こるとは限りませんが、一度に起きてしまうこともあります。
また、痙攣は震えとは異なりますので注意しましょう。
発作による痙攣の場合、数分でおさまるのが特徴です。その後しばらくは放心したようにボンヤリしていたり、何日か正常に戻れないような場合もあります。
またすぐに正常に戻っても間隔をあけて同じ発作を繰り返すこともありますので、その後の様子には十分な注意が必要です。
何度か繰り返すような場合は、どの位の感覚で発作が起こるかも把握できるようにしておきましょう。
てんかんが起きた時の対処法
部分的な発作であればまだしも、全身を激しく痙攣させた発作が突然起こった場合、飼い主さんも恐怖と不安でパニックになってしまうかもしれません。
しかしむやみにどうにかしなければと行動を起こすことが、逆に飼い主さん自身の怪我や犬の脳への衝撃など二次災害につながることもあります。
てんかんの発作はその後一定の間隔で繰り返す可能性もありますので、まずは落ち着いて、犬の様子をよく見ることが必要です。
仮に全身的な発作で奇声を発していたとしても、犬には意識がないことから、苦しくて叫んでいるものではありません。
口にタオルなどを入れようとして近づくと、思わぬ強い力で噛まれてしまうこともありますの十分に注意してください。
また、てんかんの犬を留守番させる時は、周りにぶつかって危険なものがないか、危険があればペットガードなどで覆って対処して出かけるなど、犬が留守中に発作を起こしても事故が起きないように整頓することを心がけましょう。
①前兆となる発作の場合
この時点では、前兆となる発作であるか、それ以外の別の原因でその症状が現れているかの判別がつきにくいこともあり、ほとんどできることはないと考えれます。
ただし、この時の経過を記憶しておくことで治療に役立つこともあるため、落ち着いて犬の様子を見守りましょう。
もし何度かてんかんの発作を繰り返している犬の場合であってもそれは同じですが、その後の発作のことを踏まえ、仮に突然倒れ込むようなことがあっても犬が怪我をしないように、辺りに危険なものがあれば片付けておくと良いでしょう。
また、倒れて脳に衝撃が加わらないよう、柔らかいクッションなどを用意しておくことも大切です。
②部分的な発作の場合
①の前兆となる発作の場合と同様の対応しかできない場合がほとんどです。
ただし部分的な発作では、犬が意識が朦朧としているにも関わらず徘徊するように動き回ったり、よだれや泡が口から出てくるなど、飼い主さんが思わず犬に近づきたくなってしまう場面も多くなります。
こんな時もむやみに犬の口元などに手を近づければ、無意識的な力で噛まれてしまうことがあります。飼い主さんは極力周りで様子をうかがうことに徹し、それ以上犬が傷つくことのないよう注意してあげましょう。
③全身的な発作の場合
激しい痙攣と苦しそうに見える様子に、飼い主さん自身が冷静さを失わないように、しっかりと犬と向き合いましょう。
まず言えることは、犬に意識はなく、苦しみは感じていないこと。これがわかれば少し落ち着いて対処できるかもしれません。
一番に行うことは、犬がそれ以上怪我をしないようにすることです。
特に突然倒れたりすることで頭部に衝撃を受け脳に外傷を受ける危険性があります。クッション、毛布、そこらへんに落ちている洋服でも何でも良いので、柔らかいもので犬の衝撃を和らげるようにしてあげる心構えを持ちましょう。
また、同時に、近くに倒れやすいものがないかも確認し、危ないものがあれば予めどかせておきましょう。落下物にもご注意ください。
犬が倒れて全身を痙攣させていても、飼い主は見守ることが必要です。
タオルを口に入れたり、意識のない犬に薬を飲ませることも効果的でないばかりか、飼い主さんが噛まれて怪我をするだけです。薬は吐き出されて意味をなさないため、飲ませるのであれば、意識が回復してから行うようにしましょう。
何か犬のためにできることはないかと考えたくなりますが、周りの危険を取り除いたあとは、発作が始まった時間や終わった時間、発作を起こす前後の様子や、直前に何を食べたか、普段と違う行動や出来事はなかったか、などを記録しておきましょう。
こうした記録がその後の治療に役立つことがあります。
愛犬のてんかんは治る可能性はあるの?
残念ながら、「完治する」とは言い切れないのが現状です。
しかし適切な治療を続けることで、難治性のてんかんでない限り、発作の頻度を最小限に食い止めることが可能となってきています。
そのため「治った」と言えそうなほど症状を抑えることでできる犬もいます。
てんかんの犬にとって最も大切なのは、QOL(Quarity Of Life:生活の質)の向上にあると言われています。
発作で思うようにならない時間を極力減らし、快適に過ごせる時間を犬に与えてあげられることが目標です。長丁場になりますが、根気良くてんかんと付き合っていかれるといいですね。
①薬
犬に使うことができる薬は限られていますが、効果があると実証された「抗てんかん薬」があります。
てんかんの症状に合わせて処方されますので、獣医さんの判断の下で選択していくことになります。
神経細胞の興奮を抑制する効果があり、犬のてんかんでは一番に処方されることも多いのですが、副作用の観点から人間での処方は減少しているそうです。将来的に犬の治療も他の薬に取って代わる可能性もあります。主な副作用としては、肝臓への負担、ふらつき、性格の変化などがあります。長期の使用になる場合は定期的な血液検査での確認が必要でしょう。◇臭カリウム
フェノバルビタールと並行して使われることが多く、9割近いてんかんの抑制効果が得られることが期待されています。副作用が少ないため、フェノバルビタールで思うような効果が得られなかった際に、臭カリウムを増量して反応を見ることもあります。
◇ゾニサミド(エクセグラン錠)・コンセーブ
新たに日本で開発された薬です。
強い効果を発揮する期待が持てるため、フェノバルビタールや臭カリウムでの効果が見られなかった際に使用されることがあります。
ただし、抑うつや食欲不振などの副作用が強く出ることもありますので、様子を見ながらの使用となります。
◇ジアゼパム
注射で利用される場合もありますが、座薬として、家庭での発作の際に飼い主さんが自分で使う意図で処方されることもあります。発作を落ち着かせる効果が期待できます。
◇クロナゼパム(リボトリール錠)
即効性の期待できる薬ですが、長期使用により効果が薄れていくと言われています。抗てんかん薬を切り替える際に、一時的に使用することが多い薬です。
②ハーブ・漢方薬
自然療法的な治療のひとつとして、ハーブや漢方薬の使用がてんかんに良い影響を及ぼすこともあります。
動物専門のハーブや漢方薬を処方してくれるところも増えてきているので、相談の上、自分の犬に合った漢方薬を作ってもらうことをおすすめします。
ただし、抗てんかん薬との併用を考えている時は、掛かりつけの獣医さんと、ハーブや漢方薬を処方してくれる薬剤師さんに必ず相談してください。
相乗効果が得られるとは限らず、合わない場合は悪化する危険性もあります。
最後に
てんかんの発作は見ている飼い主も動揺してしまうほどに激しい場合もあります。
しかしその発作の際にできることは、冷静になること。犬が倒れた衝撃で脳に外傷を負ったり、家具の転倒や落下物で怪我をしないように守ることが必要です。
また、辛そうな犬を見て身体をさすってやりたくなるところですが、意識のない犬が思わぬ力で噛んでくることもありますので、静観することも忘れずにいてください。
てんかんの治療は長期にわたるものですが、適切な処置で寿命まで上手に付き合って元気に生きていくことも可能です。神経質になりすぎず、快適な生活を送れるよう、獣医さんとより良い治療法を見つけられると良いですね。
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